▶︎ここ数日、麻布学園が学費を約10万円値上げすることについて反対する旨の別報が発行されたり、生徒の間で話題になったりするなど、校内を騒がせている。
▶︎学費値上げの波は、他の私立高校でも広がり、都が東京都内181の私立高校を調査した結果、昨年度と比べて今年度の初年度学納金を値上げした学校の数は56校、全体の30.9%に上った。さらに、令和に入ってから6年間、初年度学納金の平均額は増加傾向にあるが、例年の増加率も前年度比1%前後にとどまっていた。しかし今年度に至っては2%の増加率が見られ、麻布だけではなく、都内の私立高校全体で大幅な値上げが行われたことが窺える。
▶︎学費値上げと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、東大が学費を値上げすることに反対した学生たちのデモ活動だ。学生運動時のシンボル的な建造物である安田講堂前では、広場にテントを建ててハンガーストライキを行った学生もみられた。年間約11万円の学費値上げに対して、東大・藤井総長(麻布卒)をはじめとする当局が学生の意見を顧みず一方的な学費値上げを強行しようとしたことで前述のハンストを含む大規模なデモが行われたのだ。
▶︎学費値上げは基本的に否定されるべきものだ。新たに麻布の門扉を叩かんとする未来の麻布生たちを学力以外の理由で拒む事になりかねないし、10万円という金額は麻布生を保護している家庭にとっても無視できる金額ではない。また、百歩譲って学費を値上げするにしても、学校側は生徒保護者問わず積極的に説明を行うべきであり、理解を求める努力を最大限行うべきだ。
▶︎現状学校は学費値上げについて手紙を通じて保護者に通達し、説明会を開催したのみである。このままでは「説明なき値上げ」だ。
▶︎しかもその説明会はあまりにも不十分だ。使う用途を具体的に決めず学費値上げのみを強行しようというその姿勢はある意味で『麻布らしい』が、文運実の予算案の方がよほど健全で責任感あるものとなっている。
▶︎学費の値上げ理由が本当に麻布の未来に必要な設備、制度のための投資なのか、それを審判する権利が我々にはあるはずだ。しかし、審判の前段階である情報の開示、これすら行わない学校側の対応には不誠実極まりないと言わざるを得ないし、保護者にのみ通達し生徒にはなんら広報を打たないという事実には我々生徒が学校運営の観点から不可視化された存在として扱われているという実感を伴い、不快さすら覚える。
▶︎生徒はこれらの学校側の対応に対し頑として否定的な立場を貫き、説明と対話を求めるべきだし、予算委員会をはじめとする諸自治機関はそういった生徒の声を汲み上げ、実践に移す力があるのだから、当然の義務として生徒委員会をはじめ教員、理事会等に積極的な働きかけを行うべきだ。自治機関としての輝きがとうに失われたとはいえ、最低限の義務と責任を果たさなければならない。
▶︎何はともあれ、学校側は生徒保護者問わず、即時に値上げに関する説明を。「愛と誠をもとゐとたてつ」の精神は、まだ忘れられていないはずだ。
(K.S.)
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